いつもは人様のお話ばかりで恐縮しております。今回は私共を
テーマにした夫婦喧嘩のお話です。
ご退屈かも知れませんが。宜しくお付き合いの程、お願い申し上げます。
お話は昭和五十二年。“寿司はし”は無事開店一周年を迎える事が出来ました頃のお話です。
店もようやく落ち着き何か記念にと妻の喜ぶ顔が見たくて
仕入れの帰りに花でもと思い柳橋市場中で花屋を探し回りました。
時間が無く大変焦りましたがやっとシクラメンの鉢植えを買い妻の喜ぶ顔を思い浮かべ家に帰りテーブルの上に飾りました。
妻はそれを見るや「蚊や虫がよってくる」「水をやるのが面倒」等と不機嫌な顔で答えた。
自分は喜びの声を期待して帰ってきたのに・・・
男はロマンチストなのです、落胆した、妻の性格だから仕方がない。
期待した自分が悪かった。だが彼女の口は止まらない、同じことをもう一、二度言う
ついに切れた！！せっかく買ったシクラメンを手で握りつぶし家を飛び出た。
目の前にあった、その月の売り上げやら釣銭の入ったバッグを持って六十万円ほど入っていたと思う。
このお金を使い切る迄返らないつもりで・・・つまらない。
自棄を起こして車に乗った、家に帰りたくなかった。
暫く市中をさ迷い、どうしてやろうかと思いを巡らした。
ギャンブルでもやるか？飲みに行くか、風俗で使い果たすか
でも今は朝、どこも店が開いていない、取りあえず喫茶店に入りコーヒーを飲んで色々考えた、だが何も思い浮かばない。
時が経つにつれ、段々怒りも収まってきた。
疲れて眠くなってきたのでひとまず家に返ることにした。
結局２５０円しか使えなかった、「何と小心者か……」
自嘲気味につぶやいた。家に帰ると彼女は俺のことを心配していると思いきや、店の心配をしていた。
臨時休業の張り紙をどう書くか、お客さんにどう説明するか、そればかり考えていたらしい。
花の事で夫の心を傷つけたとは微塵にも思っていない様子。
結婚して二年半、妻の性格は解っていたつもりだが、一個の性格なのか女性特有の部分なのか未だに解りかねている。
とにかくそれから我が家では、記念日には誕生日も含め特別なイベントは行っていない。後に生まれた子供達は別だ。
いや、一度だけ結婚十周年の時、ペアで腕時計を買った、それとて女房は二〜三度腕に巻いただけ、自分は休日の度つけていたのに。
情緒とかムードはないのかねえ、まあ考えてみれば女房は仕事に追われ、子育てに追われ、それどころではなかったから、しかたのない事かな。
解っているのだが時々腹を立てる自分がいる。
この顔でromanticな生活を望むのは所詮無理なことか。
３０数年経った今でも、時々笑い話のつもりでお客様に此の話をする、殆どの人には大受けするのだが女房はむきになって嫌がる。
その後も色々あった一例として『夫は殺人犯！』出来事があった、ある日些細なことで喧嘩をした原因さえも忘れてしまっている。
覚えているのは、自分で言うのもおかしいが普段温厚な自分が尋常では無い、些細なことで烈火のごとく怒った。
そんな時は、女房適当なところで引くのだが、この日はとことんはむかってきた、閉店後のことである。
大量の飲酒のせいもある、女房は素面、店外に出てからも大声で罵り合っていた。このとき女房、火に油を注ぐがごとく口攻撃。
殺意に似たものが沸いてきた、雨が激しく降っていた。
傘の先で刺してやろうと本気で構えた。
その時、天の声が聞こえた「健二、落ち着きなさい、愛する女房を殺してどうなる。」・・・
だったかな？とにかく事なきを得た。
とにかくこの時期は短気だった、女房も良く私に逆らった。
喧嘩は日常茶飯事、ご近所には随分ご迷惑を掛けたと思う、あの時は若かった、反省しなければならない。
現在は何とか仲良くしている、だが逆らい癖は直らない。女房は二人の相性(血液型・夫＝A型、妻＝AB型)は大凶だと、事ある度に言う。
「だからどうしたと思うが深く考えない。」非常につまらない話をしてしまいました。
凄く古い話でしたが女房には内密にお願い致します。とても嫌がります、どこの家庭にもありそうな笑い話と片付けても良いと思うのですが、そうして下さい。
こんな些細なことを繰り返しながら、此からも生きていくのでしょう。どこの家庭にもある、滑稽にも思える様なこと、その時は真剣でも振り返れば思い出の一つなのでしょう。
他人様の夫婦喧嘩をネタにして面白おかしく書いたつもりですが自分達もこんな大人気ない事を繰り返してきたのです。
そして、これからも……完
オヤジ
トップページに戻る